愈史郎 愛の形
※この記事には鬼滅の刃の結末に関するネタバレがあります。
ある日のこと。
気まぐれにテレビのチャンネルをNHKに合わせてみると、万葉集の藤の花を詠んだ歌を紹介していました。後で調べたところ『万葉の花』という番組名のようです。
藤の花といえば令和初の国民的ヒット作として注目を集める人気漫画『鬼滅の刃』に登場する鬼除けの花として有名です。
ガチの鬼滅好き(アニメより原作派)の僕にとって偶然巡り合ったこの番組は大変興味深く、しばし食い入るように視聴しました。あわよくば途中からじゃなく最初から見たかった!
そんな中で紹介された藤の花を読んだ万葉集の一首がこちら。
我が宿の
時じき藤の めづらしく
今も見てしか 妹が笑まひを
大伴家持 『万葉集』
(意味)
私の家に季節外れの藤が咲きました。
めづらしいその花のような、あなたの笑顔を今見たいものですね。
僕はこの歌を聞いた時、鬼がいなくなり平和になった世界で生き続ける愈史郎が珠代への想いを詠んだ歌のように感じました。鬼滅ガチとしてはそろそろ末期かもしれません(笑)。
そうか愈史郎の珠代への愛の形って和歌だったんだ。どおりで美しいはずだと勝手に一人納得してしまいました(笑)。
※あくまで僕の個人的な感想です。
となるとこの歌以外に藤の花を詠んだ万葉集が俄然気になる!というわけで早速検索。
するとこんな歌を発見!
恋しけば
形見にせむと 我がやどに
植ゑし藤波 今咲きにけり
山部赤人 『万葉集』
意味
恋しいので形見にしようと庭先に植えた藤の花が今咲いています。
うぎゃあああ!!まんまや!!まんま愈史郎やないか!!!こんなことある!?
これはまだまだありそうだ。ん?てか万葉集って全部で何首あるんだ万葉ってくらいだから1万以上あるのか?(ないです)
「万葉集」(まんようしゅう、萬葉集)は、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集である。万葉集の和歌はすべて漢字で書かれている(万葉仮名を含む)。全20巻4,500首以上の和歌が収められており、「雑歌(ぞうか)」宴や旅行での歌、「相聞歌(そうもんか)」男女の恋の歌、「挽歌(ばんか)」人の死に関する歌の3つのジャンルに分けられる。和歌の表現技法には、枕詞、序詞、反復、対句などが用いられている。
Wikipedia
なるほど4500首ね。
と、これは!!・・・すごい歌を見つけてしまった・・・!!
こちらです。どうぞ。
我が命の全けむかぎり忘れめや
いや日に異には念ひ益すとも
笠女郎 『万葉集』
意味
私の生命がある限り、貴方のことは忘れません。
日ごとに想いが増すことはあったとしても。
ぐはッ!!!(尊死)
これはやばい。俺は発明してしまった。万葉集の恋の歌を愈史郎から珠代への愛の歌と解釈すれば鬼滅の刃の最終回後のストーリー脳内保管できるぞこれ。エンドレスで愈史郎スピンオフ作品作れるわ。
というわけで愈史郎ファンは今すぐネットで万葉集買いましょう(笑)。
吾峠先生は百人一首が好き
よくよく思い出してみると、以前ジャンプ巻末コメントで吾峠呼世晴先生が百人一首について明言してたんですよね。
百人一首の解説見てるんですが今も昔も人の心って変わらなくて感動している
週刊少年ジャンプ2020年18号 吾峠呼世晴
例えば「朝ぼらけ」っていう言葉が鬼滅のサブタイトルで使用されたことがあるけど、これは実際に百人一首で使われてます。
朝ぼらけ 有り明けの月と見るまでに
吉野の里に 降れる白雪
坂上是則 百人一首
おお!?歌の内容もなんとなく原作に似ている!あ、いや逆か(笑)、原作がこの歌をオマージュしてるのか。
前にバクマンっていう漫画で新人漫画家が探偵漫画を描くことになった時に担当編集者から名作推理小説・映画が山ほど送られてきたっていうシーンがあったけど、現実でも吾峠先生の担当編集が万葉集全巻セット+古典和歌全集を送ってきた!なーんてこともあったのかもしれない(笑)。
鬼滅の刃に登場する人物は、漫画のキャラなのにまるで本当に生きているような存在感があるのはもしかしたら吾峠先生が万葉集や百人一首などの古典和歌集を読み込んでいるからなのかもしれませんね。「教養は言霊に宿る」といったところでしょうか。
てなわけで僕が百人一首で鬼滅っぽさを感じた歌をピックアップしてみました。
ただあんまり時間とれなかったので雑にいきます(笑)。
思へども なほぞあやしき逢ふことの
なかりし昔いかでへつらむ
村上天皇 百人一首
意味
貴方を恋しく思っていると、貴方に逢う前はどんな気持ちで過ごしていたか不思議に思われる。
これは愈史郎はもちろん蛇柱の伊黒さんにも通じるものを感じるなあ。
伊黒さんにとって恋柱・甘露寺蜜璃の存在は恋慕の対象である同時に魂の救済でもあったのだと思います。
君がため惜しからざりし命さへ
長くもがなと思ひけるかな
藤原義孝
意味
貴方に逢う為ならば惜しくないと思っていたこの命までもが、お逢いできた今となっては長くあってほしいと思うようになりました。
上に同じく、蜜璃と出会ってからの小芭内の心情ですね。
最終決戦時の小芭内の独白。蜜璃への思いを吐露したこのセリフ
まず一度死んでから
汚い血が流れる肉体ごと取り替えなければ
君の傍らにいることすら憚れる
この言葉はもはや詩を超えて和歌だよね。芸術ですわ。
これ以外にも探せばまだまだいっぱいあるんだろうけど全部紹介するのはとてもじゃないけど不可能なので興味が湧いた人は調べてみて。こんなのあったよ!ってのが見つかったら教えてくれると嬉しいです。
最後に一首、鬼舞辻無惨っぽい歌を見つけたのでこれを紹介して終わりにします。
あはれともいふべき人は思ほえで
身のいたずらになりぬべきかな
謙徳公
意味
「可哀想に」と言ってくれるはずの人も思い当たらないまま、私はこのままむなしく死んでしまうでしょう。
「生き汚い」という言葉はこいつのためにあるような本当に救いようのない悪党だったな(笑)。
死んだ後も「人の想いって素晴らしいんだな!感動した!俺もやろ!!炭治郎に託すわ!!」って自分の都合のいいように解釈するところとか不快すぎて最高でした。
でも顔カッコいいから好きやで。死ぬ間際カエルみたくなってめっちゃブサイクだったけど。しかし最後巨大赤ん坊状態になって死ぬとはなあ。AKIRAかよ(笑)。
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コメント
背中の痛みなんともないようで安心しました
まさか鬼滅終わった今正論を言う無惨コラとか音柱も草葉の陰で喜んでる→だから音は死んでねえみたいな定番ネタ以外で無惨をまた見るとは思わなかった………
そんなネタあったんですね。全然知らなかったです。
10巻巻末の外伝で、幼い伊之助が言葉を覚えたのは
近くに住んでいた老人とその孫(青年)の影響という話がありましたが。
その中でが伊之助に百人一首を読み聞かせていましたね。
コメントありがとうございます。
ありましたね!なんでそれを思い出せなかったのか!書き終わった今になって悔しいです(笑)。